ナツユメナギサ レビュー ~「ユメ」が達成した最高の結末~
2012年01月14日 (土)
![]() | タイトル ナツユメナギサ メーカー SAGA PLANETS 発売日 2009年7月31日 シナリオ 木之本みけ , 若瀬諒 , 姫ノ木あく , 新島夕 , 藤井リルケ , なたけ 原画 ほんたにかなえ , 小桜りょう , せせなやう 音楽 藤宮圭 プレイ時期 2010年3月 プレイ時間 約20時間 評点 84 |
表面上はきれいな物語。だが、その実は残酷な物語。けれどよくよく考えると残酷な物語の中にも希望が見えてくる。
本作のヒロインは5人。彼女らは全員何かしらの問題を抱えている。その問題を解決し、主人公と結ばれるシナリオはどれも見かけ上きれいにまとまっている。
それぞれ単独で存在すれば何の問題もないシナリオだが、本作を残酷に見せているのはその構造。4つのルート終了後に解放される最終ルートはそれまでの4つのルートを全て無かったことにしてしまう。「全ては夏の夜のユメ」、そう言って最後のために4人のヒロインのルートが夢オチで切り捨てられるのはとてつもなく残酷だ。4つのルートで設定が徐々に明かされていく中、私はそれらが夢であることだけは避けて欲しいと願っていたが、最終ルートでそうだと明かされた時、ひどく残念に感じた。自分が気に入ったキャラクターを消されたような気がしたからだ。
しかし、夢であることを前提に再び読み直した時、4人のヒロインのシナリオは決して無かったことにされたわけではないと読み取れる。全てが夢として消されるのではなく、夢の記憶を以て4人のヒロインの現実の世界が変わっているのである。主人公によって各々の問題が解決される夢を見た彼女達は、主人公無しでも自己の問題に立ち向かえるだけの強さを得ることで悩みを解決し、幸福を手にしている。エピローグが夢の世界でなく現実世界で彼女らが幸福を手にした姿だと解釈すると、本作は残酷な物語から希望の物語へと変わる。この作品の解釈については以下のサイトで詳細に考察されている。
●ナツユメナギサ 疑問・考察 -フェンリルの雑記-
この一見残酷に見える物語が実は救われているという物語構造、私はこの構造を本作で最も評価したい。シナリオ構造に伴う難しい設定の整合性がきちんと取れているのがすばらしい。幾人にもわたるシナリオライターの執筆で各ルートで設定の整合性を取ったディレクターもしくはメインライター「新島夕」の手腕は称えるべきだろう。
そして、この「ユメ」を使った物語構造はただつじつまがあっているというだけで評価するに留まらない。美少女ゲームのフォーマットで最高のハッピーエンドを達成するための解のひとつをも提示している。
美少女ゲームのシナリオではひとりの主人公に対して複数のヒロインが存在し、それぞれのヒロインが内在する問題を抱えているタイプのものが多い。しかし、主人公ひとりだけでは彼女ら皆と付き合い、内在する問題を全て解決することはできない。「ではどうすればいいのか?」という問いに対して本作は解を示している。「ユメ」を以て各々のヒロインの悩みの解決手段を提示し、現実でそれぞれヒロイン達が解決するという物語構造は、主人公を除くヒロイン全員が救済されるという最高の結末となるのだ。
「ユメ」は「夢オチ」という形で容易に残酷な結末を提示することができる。しかし、「ユメ」は希望を導き出し、その後の物語で皆が救われる最高の結末を達成することもできるのである。
関連:ナツユメナギサ 感想 ~ナツユメで一番可愛いのはもちろん……~
それぞれ単独で存在すれば何の問題もないシナリオだが、本作を残酷に見せているのはその構造。4つのルート終了後に解放される最終ルートはそれまでの4つのルートを全て無かったことにしてしまう。「全ては夏の夜のユメ」、そう言って最後のために4人のヒロインのルートが夢オチで切り捨てられるのはとてつもなく残酷だ。4つのルートで設定が徐々に明かされていく中、私はそれらが夢であることだけは避けて欲しいと願っていたが、最終ルートでそうだと明かされた時、ひどく残念に感じた。自分が気に入ったキャラクターを消されたような気がしたからだ。
しかし、夢であることを前提に再び読み直した時、4人のヒロインのシナリオは決して無かったことにされたわけではないと読み取れる。全てが夢として消されるのではなく、夢の記憶を以て4人のヒロインの現実の世界が変わっているのである。主人公によって各々の問題が解決される夢を見た彼女達は、主人公無しでも自己の問題に立ち向かえるだけの強さを得ることで悩みを解決し、幸福を手にしている。エピローグが夢の世界でなく現実世界で彼女らが幸福を手にした姿だと解釈すると、本作は残酷な物語から希望の物語へと変わる。この作品の解釈については以下のサイトで詳細に考察されている。
●ナツユメナギサ 疑問・考察 -フェンリルの雑記-
この一見残酷に見える物語が実は救われているという物語構造、私はこの構造を本作で最も評価したい。シナリオ構造に伴う難しい設定の整合性がきちんと取れているのがすばらしい。幾人にもわたるシナリオライターの執筆で各ルートで設定の整合性を取ったディレクターもしくはメインライター「新島夕」の手腕は称えるべきだろう。
そして、この「ユメ」を使った物語構造はただつじつまがあっているというだけで評価するに留まらない。美少女ゲームのフォーマットで最高のハッピーエンドを達成するための解のひとつをも提示している。
美少女ゲームのシナリオではひとりの主人公に対して複数のヒロインが存在し、それぞれのヒロインが内在する問題を抱えているタイプのものが多い。しかし、主人公ひとりだけでは彼女ら皆と付き合い、内在する問題を全て解決することはできない。「ではどうすればいいのか?」という問いに対して本作は解を示している。「ユメ」を以て各々のヒロインの悩みの解決手段を提示し、現実でそれぞれヒロイン達が解決するという物語構造は、主人公を除くヒロイン全員が救済されるという最高の結末となるのだ。
「ユメ」は「夢オチ」という形で容易に残酷な結末を提示することができる。しかし、「ユメ」は希望を導き出し、その後の物語で皆が救われる最高の結末を達成することもできるのである。
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