”優等生”という言葉がこの上なく似合う作品。シナリオ重視のギャルゲー系エロゲのお手本的作品とも呼べるのではないでしょうか。
全体的に良くできていて、シナリオもグラフィックも音も演出も…etc、総じて高いレベルでまとまっていました。作中で主人公が優等生だと称されるシーンがいくつかありますが、この作品もまさにそうで良作であると感じました。今回のレビューでは、私の中でこの作品を良作たらしめている大きな要素を2つあげ、それを中心に話を進めていきます。
1.魅力あるキャラクター
複数いるヒロインの中からプレイヤーの好みのヒロインを選択肢で選び、個別ルートでそのヒロインとの恋愛を描く、ギャルゲー系エロゲではよくある構成です。
そういったエロゲで重要なのはキャラクターの魅力です。「いかにヒロインの魅力をシナリオでうまく引き出しているか」萌えゲーでは重視されるポイントです。その点では星空のメモリアはよくできていました。ホームページのキャラクター設定を見ただけでは何の変哲もないエロゲでしたが、プレイ後にはどのヒロインもプレイ前より大きくキャラの評価があがりました。それは共通パートでの会話劇であったり、個別ルートに入ってからの萌え仕草やイベントシーンであったりとヒロインの可愛さをうまく引き出していました。特に会話劇がうまかったですね。ライターのなかひろのテキストは、第三者視点での文章が若干わかりにくかったですが、それ以外の文章は良くできていたと思います。
プレイヤーの持つ属性にも左右されるかと思いますが、どのキャラクターも良かったかと思います。私の好みで言えば、明日歩、衣鈴、展望台の彼女、メアあたり。ダメ人間&ダメ人間フェチのコンビも良いかと。特に大はまりしたキャラはいませんでしたが、気に入ったキャラは多く、作品を十分に楽しめました。
2.設定・構成の活かし方
本作では、設定がよく考えられており、それをシナリオに上手く組み込んだ構成となっていました。それは、星の話であったり、雲雀ヶ崎という舞台だったり、天体観測サークルの面々だったり、主人公の親の世代だったりといろんな要素を上手くまとめていました。12次元とかあまり細部につっこむとしんどそうですが。まあ、この手の作品では十分なレベルです。
そして、おもしろいと思ったのが「悪夢を刈る死神」という設定。ギャルゲー系エロゲでは通常主人公に想い人は特にいない状態からスタートします。しかし本作では、主人公に「展望台の彼女」という幼い頃に再会を約束した想い人がおり、生まれ故郷に戻ってきた主人公がその想い人と再会しようとするところからスタートします。
ここで一つの問題が生じます。主人公が「展望台の彼女」以外のヒロインを好きになるという状況です。「展望台の彼女」一人のルートだけを収録するならばそれで良いのですが、他のヒロインと恋愛関係を結ぶには障害となります。そこで本作ではその主人公の感情を悪夢として死神に刈らせ、「展望台の彼女」のことを忘れさせるということにしていました。それが設定上矛盾がないように働いており、さらに謎という点でもプレイ中に少しずつ情報を出していくのは続きを読ませると言う点で優秀だったと思います。ただ、私がプレイしている時はどうしても「展望台の彼女」のことが気になって攻略最中のヒロインに完全にのめり込むことができなかったのはちょっとマイナス。でも、終盤の「展望台の彼女」のルートでは彼女の件がしっかり解消されていて良かったです。最後にしてやっと結ばれる、彼女のルートが本作では一番のお気に入りです。
この他にも、に少しずつ伏線をはっていって個別ルートで回収していくという構成が良くできていました。その代償として攻略順をある程度固定しなければならず自由度は下がりましたが、シナリオとしてはおもしろかったので満足しています。
総評
以上、星空のメモリアの良作たらしめている要素について2点述べました。始めにも述べましたが、本当に優等生という言葉が似合う作品だったと思います。共通パートが10時間近くあって全部プレイするとかなりの時間になりますが、そこを気にしなければ非常に人に勧めやすい作品です。
ただ、あくまで優等生であり良作で、天才的作品とも言える名作には及びませんでした。キャラクターにしろシナリオにしろもっと突出した何かがあれば、さらに評価が上がったかと思います。欲張りかもしれませんがもう少し頑張ればいけると思うので、スタッフの次回作に期待したいと思います。