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素晴らしき日々~不連続存在~ レビュー ~テーマの重要性~ 

2010年07月05日 ()
 


素晴らしき日々 ~不連続存在~ 特装初回版
タイトル    素晴らしき日々
メーカー   ケロQ
発売日    2010年3月26日
シナリオ   すかぢ
原画      基4% , 硯 , 籠目 , karory , すかぢ
音楽     ryo , szak H.B STUDIO
プレイ時期 2010年3月
プレイ時間 35時間
評点     99








◆ 「語り得ぬもの」を示した『終ノ空』と『素晴らしき日々』

 「語りえぬことには、沈黙せねばならない」
 作品全てを使ってこの一文を示そうとしたのが『終ノ空』という作品でした。その11年後、『終ノ空』の設定を土台に『素晴らしき日々』という新たな物語が作られました。『素晴らしき日々』でもまた「語り得ぬこと~」を示す姿勢が見られましたが、作品全てがそこに向かっていた『終ノ空』と比べるとその点に関しては完成度が落ちていました。
 それでも、私はこの『素晴らしき日々』の方を推します。それは、『素晴らしき日々』で描かれていたものが素晴らしかったから。「語り得ぬこと~」に変わり、物語のメインテーマとして掲げられていたものに感動したから。そして、この『素晴らしき日々』に特別なものを見出したからです。


◆ 大きな変化をもたらしたテーマ

 『素晴らしき日々』は『終ノ空』と比べると、その与えられる印象が大きく変わりました。同じ設定を元にしながら、どうしてそんなにも変わったのでしょうか?それは、「語り得ぬこと~」を示していた『終ノ空』に対し、『素晴らしき日々』は別のストーリーの核となるテーマが存在していたことに起因します。そのテーマとは、


幸福に生きよ!

Ludwig Josef Johann Wittgenstein 『草稿 1916年7月8日』
『素晴らしき日々』第六章「JabberwockyII」


です。「語りえぬこと~」「幸福に生きよ!」どちらもシナリオライターのすかぢ氏が最も影響を受けたという哲学者「ウィトゲンシュタイン」の著作の一文です。同じ哲学者の言葉ですが、この2つは大きく異なります。すかぢ氏の作品に対する姿勢が変わって、メインテーマがこのように変わったことは作品に大きな変化をもたらしました。


◆ “駒”ではなく“人”として描かれたキャラクター

 そのテーマに沿って作られた物語には“人”というものがしっかりと描かれていました。『終ノ空』は「語り得ぬもの」を示すために必要なこと以外をほとんど削ぎ落としてしまったために、キャラクターの言動がわかりにくく、電波と称されることも多々ありました。しかし、『素晴らしき日々』はそれとは異なり、登場人物に背景を与え、心情を丁寧に描写することによって、しっかりと意思を持ったキャラクターが生まれました。そうすることで読者は物語に入り込みやすくなりましたし、そのキャラクターの物語も起伏のある魅力的なものになりました。


◆ 独特の世界の美しさ

 そして、そこで描かれた世界というのは他に類を見ないものです。1人の少女の選択から全ての歯車が狂っていく物語は、連続飛び降り自殺事件を経て、新興宗教の驚異的な広まりにつながっていきます。『終ノ空』ではあっと言う間に終わってしまったその物語も、過程がしっかり描かれたことで厚みが増して、読み応えのあるシナリオになっていました。『終ノ空』では新興宗教の異様さだけが描かれましたが、『素晴らしき日々』ではその成立の過程や実態、独特の価値観が多分に描写されていました。


◆ 最悪の結末から新たな結末へ

 しかし、そうしてただ厚みを増しただけの物語ではどうあがいても『終ノ空』と同じ結末へと収束していきます。それは全ての歯車が悪い方に向かって行った結果であり、素晴らしき日々からは遠いものです。その歯車をどうやってずらしたか。そこで「幸福に生きよ!」のテーマが活きてきます。『終ノ空』でも問うた「何故、人は存在しているのか?」という命題。この「生の意義」に対して、「幸福に生きるため」という結論を得たすかぢ氏は、キャラクターに“生きる”という強い意志を持たせることによって物語に分岐を生じさせました。最悪な結末から“幸福に生きる”という意思によって切り開いた未来は、タイトルに恥じることのない素晴らしき日々でした。
 この分岐に関してはどのキャラクターも幸福を享受できるようになっていたのも良かったです。中にはそれが一瞬であったり、夢であったりするキャラクターもいますが、視点となった5人のそれぞれの幸福な時間が描かれていました。
 ただ事件をそれぞれの視点で追っていっているだけに過ぎず、物語に結論が出ていなかった『終ノ空』。その『終ノ空』が「幸福に生きよ!」のテーマをもとに描かれることで斯くも素晴らしい物語になっていることに、私は感動しました。



◆ 最後に……何が特別なのか

 この『終ノ空』『素晴らしき日々』は自分の中で特別な作品に位置にします。それは、他の作品では得られなかったものがそこにあったからです。
 そのひとつが、テーマの重要性を意識すること。今まで私はそれほどテーマというものを意識してきませんでした。しかし、メインテーマが変わることで物語が大きく変わった『素晴らしき日々』を読むことで、その重要性がよくわかりました。
 もうひとつが、視野の広がり。、それぞれのメインテーマの「語り得ぬことには、沈黙せねばならない」「幸福に生きよ!」、これらは短い文ですが深い意味を持ちます。これらのテーマの意味を考えることで、自分の中に新たな物の見方が生まれました。他にも「ウィトゲンシュタイン」「カント」「クザーヌス」などの哲学者の思想、それから「銀河鉄道の夜」「シラノ・ド・べルジュラック」「鏡の国のアリス」など多くの古典文学の内容が作品内に随所に散りばめられていて、それらの書物を調べたり、実際に読むことで自分の視野が広がりました。
 私はこれまで1つの作品に対して、それほど深く考えるということはしてきませんでした。けれど、この『終ノ空』『素晴らしき日々』という作品に対しては本気で向き合うことができたと思っています。その成果が作品内のテーマについて考察したレビューやすかぢ論となっています。作品を読み解くというにはまだまだ拙いものです。ですがこの作品に出会い、考えたことで、これからの私の創作物に対する姿勢は確実に変わってくるでしょう。




 参考:終ノ空 レビュー ~語りえぬことには、沈黙せねばならない~
    考察:素晴らしき日々の世界観

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[2010.07.05(Mon) 22:01] 素晴らしき日々Trackback(0) | Comments(2)
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COMMENT

wata by -
素晴らしき日々で一番印象的だったのは卓司の希実香ENDですね
当人たちがやっていることはとても正常とは言えないのに
そのくせなぜか透明感というか綺麗な感じがあるという。
終ノ空とは異なってるとは言え、彼のああ言った面を見せられると色々考えてしまいます。
そのせいか2章始まりの「それでも人よ! 幸福たれ!」が非常に印象深い…

ところで今日の日付は…

by udk
2章の希美香と卓司のやり取りはいいですよね。屋上で旋律を奏でたりするシーンは本当に美しい。



それで……今日はあの日ですね。
世界が大きく分岐する日。
せめてあの娘のために、人形を落としてくれる人がいたら……と思います。

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COMMENT

素晴らしき日々で一番印象的だったのは卓司の希実香ENDですね
当人たちがやっていることはとても正常とは言えないのに
そのくせなぜか透明感というか綺麗な感じがあるという。
終ノ空とは異なってるとは言え、彼のああ言った面を見せられると色々考えてしまいます。
そのせいか2章始まりの「それでも人よ! 幸福たれ!」が非常に印象深い…

ところで今日の日付は…
[ 2010.07.12(Mon) 20:58] URL | #- | EDIT |

2章の希美香と卓司のやり取りはいいですよね。屋上で旋律を奏でたりするシーンは本当に美しい。



それで……今日はあの日ですね。
世界が大きく分岐する日。
せめてあの娘のために、人形を落としてくれる人がいたら……と思います。
[ 2010.07.12(Mon) 23:58] URL | udk #QsgttT26 | EDIT |

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